昨年の末から今年の春まではちょっと恵まれた環境にいたこともあってその環境を生かすべくひたすらINPUTに明け暮れた。具体的には映画館で映画を見まくったのである。
ソーシャルライブラリーでざっと確認しただけで12月末から4月中頃まで14本。アマゾンに画像がないものがいくつかあるのでそれを入れると20本近く見たことになる。
その中で、ダントツの出来だったのが「戦火の馬」だ。
ところがだ。なんと信じられないことに興行成績が伸びない。
スティーブンスピルバーグ監督作品×ディズニー配給
米国の映画の看板としてこれほど強いものはないはずだ。
スピルバーグ自らクローズアップ現代に出演して反直接的に宣伝。
作品の質もいい(詳しくは僕のレビューを読んでほしい右のブログパーツの”>”を五回ほど押すと画像が出てくるのでクリックしてもらえればこのページで読める。要PC)。
しかし、MovieWalkerさんのツイートによると
初週5位。一位はドラえもん二位はライアーゲームときた。
翌週には三位に新作”シャーロックホームズ”が入って6位。
次の週には10位に落ちている。名前を挙げた三作は見ていないが、他のランキングに入った映画、ヒューゴやTIMEは見ている。どちらも面白かったしドラえもんやライヤーゲームが悪いとは言わない。それでもまるで誰も見ていないかのように戦火の馬は順位を落としていくのはどうなのか。
珍しく、僕はツイート、リツイートした。普段はしないがあまりの作品の出来と現実の落差ににそうせざるを得なかった。
「戦火の馬が神すぎる。これ以上の映画は今年ないんじゃないか、というレベル。スピルバーグ作品の中でもトップ3に入るハズ。アカデミー賞なんてただのステマです、えらい人にはそれがわからんのですよ。」
これは見てすぐの
ツイート。その後、ことあるごとにTwitter内を「戦火の馬」を検索して、いくつかのリツイートをした。
ひとつめのリツイート。3/7
@s_scanesさんのツイート「「戦火の馬」皆観ましょう。絶対観ましょう。スピルバーグ万歳。」
滅多に見ないテレビを見て
ツイート。
「月イチゴロー、戦火の馬が一位だな。これから見るやつ全部これ以下ってことか(笑)。どうしよう。でも異論はまったくない。他の作品まだ観てないけど。」
ちなみにその後このコーナーで紹介された映画をいくつか見た限りでは稲垣吾郎に全面同意。
3/11には小島プロダクションの美人広報、山本さやかさんのツイートをリツイート。
@sayapanna「戦火の馬、シャーロックホームズを観た☆戦火の馬は痒いところに手が届く演出にハンカチビチョビチョ。ホームズはメタルギア好きは2回観たくなるはず(´ω` )それにしてもダウニーJr.は愛らしいっ!」
言うまでもないが、ホームズの方はどうでもいい。
さらに3/14にはWacさんのツイートをいくつか連続でリツイート。ここではひとつだけ取り上げる。
@WacDeNordwest 「しかし、本当によくぞ、これだけ、映像の運動だけで、物語を語れるものです。そんな当初予想していたような彼岸のような映像ではないし、映像美に酔うような、そんな映画ではないと思います。ひたすら描写が物語を運んで行くのです。『戦火の馬』。」
他にも小説家、山田正紀さんが作中の伏線に疑問を投げかけたツイートをリツイートして、私見をツイートしたりエンディングクレジットに疑問を投げかけた方に勝手に返信したり駆け出し映画監督さんの感想をリツイートしたりとウザくならないように気をつけながら(笑)Pushしたのですが、私が知る限りTLで「戦火の馬」を見た人はゼロ。自分の影響力のなさはさておいて、興行成績も下がる一方なわけでこれだけの作品を観ないというのはいったいどういうことなのか、と、頭を抱えました。
邦画が売れるのはいいことだ。
ドラえもんがトップというのもファミリー映画としてあるべき姿だと思う。
しかし。
本当にこれでいいのだろうか。
前回も書いた。
「ものを作る、ということは結局過去の蓄積をいかに再構築するかにかかっている。
過去の蓄積、つまりINPUTがなければOUTPUT(ものづくり)はありえないのである。」
「しかし、より新しい演出を、より人と違ったものをと考える場合、既にあるものを知っていないと実現できない。
逆説的だが、人と違ったものを作るためには人のものをよく知っていないと違いを証明できないのだ。」
「戦火の馬」とて過去の蓄積とは無縁ではない。むしろ、これほど過去の蓄積を駆使した映画もないだろう。多くの人が数々の名作の名を挙げている。
逆に言えばスピルバーグ自身の腕に加えその蓄積も学ぶことができるのだ。この一作で。創作に関わるものにとってこれほどありがたいことはない。
そしてその蓄積は「見る側」も持つべきだ。そうすれば”目が肥える”のだ。
”目が肥えた”観客を欺くのは難しい。
必然的に創作者はクオリティを上げようと知恵を絞る。
北米ドラマが面白いのは視聴者の目が肥えていることも決して無縁ではないはずだ。
「映画並みのクオリティで、映画ではできない、オチの読めない物語が観たい。」
そう思う人がいるからこそ、ああいったドラマが生まれていく。
逆に子供だましで満足しているとどんどんクオリティは落ちていく。今の地上波テレビに思うことある人もいるだろう。あれは他ならぬ僕たちの責任でもあるのだ。
子供だましで満足せず、創作者にプレッシャーをかけ続けなければ。
でないと映画もドラマもゲームも。小説だってマンガだって死んでしまう。
誰がエンターテイメントを殺すのか。他ならぬ、僕たち受け手が殺すのである。
気をつけようではないか。そんな世界ゾッとする。
ちなみに「戦火の馬」のBlu-rayやDVD(Amazonではセットで2912円という驚異的な安値が付いている!)が7月18日に発売になるのでぜひご覧あれ。
追記:同じような危機感をお持ちの方がおられたのでリンクを貼っておきます。
ブログ珍品堂「良いものを見分けたければ本を読め」こちらでは読書離れの記事がきっかけの様子。
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